コラム・ 鉱物について

 鉱物を加工した宝石は,ほとんどが外国から輸入され市場(専門店やデパート)に出回ります。国内でも岩手県久慈の琥珀(Amber),高知県沖の珊瑚(Coral),そして新潟県糸魚川の翡翠(Jadeite)などの有名な産地があります。
 翡翠(ひすい)は,ひすい輝石という鉱物名(和名)があり,日本鉱物科学会が2016年に「国石」として選定し,2021年の内閣府の広報誌では「日本を代表する石,翡翠」として紹介しています。これは縄文時代の勾玉などが新潟産と見られているからです。ただし,現在の市場には外国のミャンマー産の方が多く流通しています。
 また,ダイヤモンドも,日本の愛媛県新居浜市と長崎県西海市で発見されていますが,これらは研磨して指輪にするほどの大きさではありません。そのために輸入品となります。
 現在,世界で産出する鉱物(約6,000種)の1/4が日本で見付かっています。単位面積当たりでは,世界有数の産出国と言えます。さらに,毎年,いくつかの新鉱物が報告されていますが,それらの発見にアマチュアが貢献しています。即ち,熱心に鉱物を探している方がいらっしゃるということです。老舗の鳥料理屋の有名なアマチュアの方もいらっしゃいました。
 鉱物は,化学組成と結晶構造で名付けられるため,動物や植物のように外観の違いで区別がつくわけではありません。その同定には,母校にも設置されているX線回折装置を使います。これは,図鑑を片手に観察しても鉱物の同定が難しいということになります。
 ご存知の方もいらっしゃると思いますが,宝石名のルビーとサファイアはコランダム(Corundum),エメラルドとアクアマリンはベリル(Beryl)という鉱物名がそれぞれにあります。外観が異なっても同じ鉱物があるということです。
 以前,菫青色(Cordierite)に似た鉱物で,ベリリウムに富んだものがあり,新鉱物と思われましたが,残念ながら産地が不明でした。産地の情報が新鉱物の申請には必要であることも付け加えさせていただきます。
 「地球はストーリーを持った文章,鉱物はその単語」という表現があります。この単語を“地球語(Terrestorian)”と呼ぼうと提案されている研究者もいらっしゃいます。私達は,すべての単語を知りません。地球を理解するためには,今後も鉱物を観察することが欠かせません。
 鉱物についてご興味があれば,一緒に観察してみませんか。

(昭和48年電気科卒 林 政彦)