コラム・ 博物館の資料

 母校を卒業後、進学した大学で博物館の仕事に興味を持ち、学芸員の資格を取得した。博物館の目的は、学芸員による資料の収集・整理・保管・公開とされている。そこで、その整理のため、当時(1980年頃)としては珍しくパソコン(マイコンとも呼ばれていた)を使ったデータベースの作成を試みた。この整理には、高校の放課後にFortranを学んでコンピュータに興味を持ったことが役立った。

 これまでボランティアで小学校や大学の資料(標本)の整理を行っているが、脆い標本もあり、気を遣って進めなければならない。また、標本の中には古い標本もあり、その地名が伊予国(現在の愛媛県)と明記されている場合、その書き直しをするなど、いろいろと手間のかかるものもあるが、実物の標本を観察する楽しみがある。

 以前、勤務していた図書館では、司書と学芸員がそれぞれ図書グループと学芸グループに分かれて図書館で所蔵の資料を整理していた。貴重本(稀覯本)は学芸グループが整理し、収蔵庫(温度・湿度が一定な部屋)で保管し定期的に展示も行っていた。普通の図書(本)で利用頻度が低い本や破損した本は廃棄されることになる。ところが、博物館の資料は、これまで廃棄が想定されていなかった。そこで、一度保管されると、収蔵庫の資料は増える一方であった。

 この度、文部科学省により博物館運営の基準が改正され、資料の「廃棄」について明記された。実際に廃棄するかどうかは、慎重に判断されると思われるが、図書と同じように利用頻度や破損の状況により廃棄できるようになる。今後、地震などによって破損した資料で、修復の費用がかかるものは、予算がない博物館では廃棄されるかも知れないのは残念に思う。このような状況に何か方策はないのであろうか。

 国立国会図書館では稀覯本のデジタル化が進められていて、雑誌などは電子化されたものが広く普及している。同様に博物館の資料もデジタル化が進められているが、実物資料の美術品や工芸品、動物・植物・鉱物などをデジタル化するのは難しい。

 いずれ、資料を完全にデジタル化することができるかも知れない。そうなれば、実物資料の破損も心配しなくてもよいかも知れない。しかも、そのデジタル化したデータを取り込んだ生成AIは、より便利な道具になるであろう。そのデジタル化に少しでも貢献できればと思っている。

(昭和48年 電気科卒 林 政彦)